長期投資のしくみ(防衛軍法)

私たち個人投資家が長期にわたり資産運用を行って人生設計を考える際には、「長期投資のしくみ」を持つことが大切であると私は考えています。

「長期投資のしくみ」というのは継続可能な資産運用のルールのことなんですが、資産運用において最も重要なことは「安値で買う」ということに尽きると思います。「高値で売る」ことは「安値で買う」ことよりもプライオリティが低いと思います。

「長期投資のしくみ」において万人向けでなおかつ強力な方法は、かの星野泰平氏が『半値になっても儲かる「つみたて投資」』(講談社プラスアルファ新書)にてご自身の情熱をそそぎ込んで説明なされた「ドルコスト平均法」です。毎月一定額を拠出して安値のときには多く、高値のときには少なく購入することによって全体として「安値で買う」ことを実現する優れた方法です。インデックスファンドとの相性が抜群であり、両者の組み合わせはある意味で最強の運用術と呼べるかもしれません。
 
繰り返しますが「安値で買う」ことが大切なのです。エリス翁だったかマルキール先生だったか覚えていないのですが、「Buy stocks, like socks(靴下を買うように株を買え)」という言葉を紹介なさっていたのを読んだとき、思わず膝を打ったものです(元々はバフェット氏の言葉のようですね)。

インデックスファンドをドルコスト平均法で積み立てる方法は、報われる可能性の高い優れた長期投資のしくみです。かつて私も実践しておりました。しかしながら・・・。

機械的に、自動的に積み立てる方法なので手が掛からないことが最大のメリットなんですが、そのメリットの裏返しで非常に退屈になってきてしまいます。人並み以上に資産運用に情熱を持っている人にとって、これは無視できない問題です。どうしたものでしょうか。

一つ当たり前の事実を指摘しておきましょう。インデックスファンドをドルコスト平均法で積み立てている人たちにとってもそうですし、個別株式やETFなどを購入する人たちにとってもそうなんですが、今という現在においてその金融商品の価額が高いか安いかは分からないのです。分かるのは後になってからです。もし分かる人がいるならば、安ければ買えばいいし高ければ売ればいいわけですのであっという間に大金持ちになっているでしょう。

したがって安いときに買うということは不可能なのです。なぜならその時点では安いのか高いのか分からないのですから。

※企業分析を行うバリュー投資家の方にとっては不可能ではないかもしれません。ですが私にはできません。またやろうとしてもできませんでした。

安いときに買うことができないのに安値で買うことが重要といわれても困惑するばかりでしょうね。そうなんです。だから安値で買うことはあきらめましょう。

おいおい、と突っ込まれそうですね。あわてないでもう少し書かせてください。

インデックスファンドをドルコスト平均法で積み立てる方法は、自動的に購入単価を引き下げて安値で買うことを可能にする方法でした。では自動的に、ではなくて人間の裁量を働かせて購入単価を引き下げて安値で買うことを可能にする方法はないのでしょうか。

安値で購入する可能性を増やし、高値で購入する可能性を減らすメカニズムを埋め込んだ方法が存在するのかどうか、考えに考えました。その結果・・・。

私は以下のような方法を考えて自分自身で実験しています。名付けて「辺境防衛軍的積立投資法」。名前が長いので「防衛軍法」としますね。有効な方法なのかどうかは分かりません。もっとも、私は有効であろうと思っているのでやっているわけですが。

まず年間の拠出金を決めます。たとえば月に10万円、年間120万円を積み立ててゆく計画を作ったとします。当たり前ですが、一年後には120万円、二年後には240万円、三年後には360万円・・・十年後には1,200万円になります。無理なく続けられる計画がよいです。月に10万円といわず、5万円でも3万円でも構いません。ただし一年後にいくら、二年後にいくらになっているはずなのか、イメージしておきましょう。

次に予備資金を用意します。これは拠出金とは別に用意しておく必要があります。目安は年間計画金額の三割程度。すなわち一年目なら120万円の三割で36万円、2年目なら72万円、という具合です。これは目安ですので必須条件ではありませんが、この予備資金の厚みが防衛軍法のキモになりますのでご留意ください。ボーナスで手当したり、月次拠出金の一部を予備資金としてプールすることを考えてください。

そして最後にアセットアロケーション(資産分配割合)とポートフォリオ(銘柄)を決めます。これは後でも変更可能ですから、そんなに悩まなくても大丈夫です。ここではグローバルバランスファンド一本に投資することを想定してみましょう。

これがドルコスト平均法ならば定期買い付けの手続きをして終わりなんですが、防衛軍法では違います。一年後に120万円になっているようにファンドを購入します。毎月買い付けてもよいし、月次拠出金を貯めておいてまとめて買い付けても構いません。もしも基準価額が値下がりして月次拠出金だけでは120万円に届かない場合は予備資金を使って追加購入します。基準価額が値上がりして120万円を超えている場合は買い付けないで、月次拠出金は予備資金としてプールしておきます。

以上のことから、一年間にファンドを購入する金額は120万円とは限りません。もっと多くなるかもしれません。とにかく一年後に資産価額が120万円になっていることが目標です。

そして二年目に入ったときには最低でも120万円から始まります。もしかしたら値上がりして120万円を超えているかもしれません。二年目の目標は240万円でした。したがいまして二年目が終了するまでに240万円になっているように月次拠出金および予備資金を使ってファンドを買い付けます。

二年目は240万円という計画でしたが、たとえば基準価額が値上がりしてもっと早くもっと高い目標に届きそうな場合は、跳び級ではありませんが、三年目の360万円を目指してもよいですし、300万円を目標とおいて240万円は絶対に防衛するライン、と設定しても構いません。この目標を決める要素は、予備資金の厚みです。逆に240万円のラインを守れないならば当面200万円を防衛ラインと設定しても構いません。ただしあまり頻繁に目標を変えるのは避けた方がよいと思います。最初に決めた年間拠出金額がおおよその目安となります。

なぜこの方法の名前が「辺境防衛軍的積立投資法」なのかお分かりいただけるでしょうか。この方法は外敵の侵入を防ぐ辺境防衛軍の動き方によく似ているからなのです。防衛ライン(=目標金額)を設定し、そこからは後退せず、割り込むようなら増援を繰り出して、少しずつ少しずつ防衛ラインを押し広げてゆくのです。

ファンドの基準価額が下落したときどこまで追加購入すればよいのか、また上昇したときどこから先は買わないでいればよいのか、目安を持つことができます。この目安というのは年間の目標金額と、何度もいいますが、予備資金の厚みです。また、無理に目標金額を上積みしていく必要もありません。人生のステージにおいてキャッシュ能力は変化しますのでそのときの状況に応じて、防衛ラインを維持するのか、拡張するのか、はたまた後退させる(一部を現金化する)のか、それは個々人の裁量次第です。

予備資金の厚みを増すために、分配金を自動的に再投資するインデックスファンドよりも、分配金を払い出すETFの方が向いている方法でもあります。分配に伴う税務上のメリットを放棄する代わりに、自分の裁量で購入額とタイミングをコントロールすることにより安値で購入する可能性を留保するためです。とはいえ資産総額が大きくないうちは、ETFよりもインデックスファンドの方が小口の購入が可能ですので実行しやすいと思います。それからこれはそんなに強調しなくともよいと思うのですが、インデックスファンドよりもETFの方が信託報酬等の費用が安いことが多いようです。

防衛軍法では資産総額が防衛ラインに対して超えているのか割り込んでいるのかがポイントになりますので、含み損益がどうなっているのかはあまり気にしません。また含み損益を気にしない方がよいと思います。長期投資を旨とするならば、局面局面での損益に幻惑されるのは望ましくないでしょう。無論、利益確定したり、資産運用のゴールが近づいてきてリスク資産から安全資産へ移行する時期が見えてきているならばこの限りではありません。

ここまで説明いたしますと、なぜ予備資金が目標金額の三割程度なのかお分かりいただけるでしょう。株式市場が暴落した場合、資産の三割が吹き飛ぶかもしれない、またそのときに追加投資して防衛ラインまで資産価額を押し戻す資金力を担保しておくためです。市場の暴落は望ましいことではありませんが、安値で購入する絶好のチャンスでもあります。インデックスファンドやETFは、資金力に乏しく個別銘柄では十分な分散投資ができない私たち個人投資家の強い味方です。

この方法は「采配」の要素がありますので万人向けではないでしょうね。また以上のような説明を私は見たことがないのですが(よく調べていないだけかもしれません)、同じようなことを考えて実践している方はきっとおられると思います。それでも自分のやり方を公開することには意味があると考えて長々書きました。何かの参考になりましたら幸いです。
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コメント

追加戦力の重要性

前回とあわせて読むと…なるほど、リメス・ゲルマニクス。

実をいうと我が家は(意識してはいないものの)ある程度余裕のある生活防衛資金とブログに記録している「株式100%PF」とに分かれており、「定額積立をしてるけど元本比で-1σぐらいさがったらひと月分ぐらいの追加投資をしようかなぁ」なんて思ってました。

かのエリス翁も「暴落時には追加資金を投じるべきだ」と書いていましたし。実際のリメス・ゲルマニクスなどの防壁でも防壁の内側にも一定間隔で控えの軍団が駐留しており、有事の際は応援にかけつけたそうですし、対応する部分は多そうですね。

ドルコスト平均法が「買付単価上昇時の平均取得単価上昇割合より買付単価下落時の平均取得単価下落割合のほうが大きい」という【意識してなくても有利になる要素】はもっと広まって欲しい部分ですね。で、あればこそエントリ中のように「高い時には買いを控えて安い時には積極的に買う」というのは合理的です。
(ご自身がおっしゃってるように【采配】の有無もあるので、合う合わないはでてきますね)

そうですよね

>モ人SYO-GOさん

基本的にみなさんは生活防衛資金として予備資金を手当てしていると思われますので、おそらくは同じようなスタイルになるんでしょうね。ただ、さすがに辺境防衛軍を妄想している人はあまりいないと思いますが。

私はこの予備資金さえもETFとして、たとえばリスコン5(証券コード:1567)の形で持つことができないかどうか考えておりまして、TOPIXが暴落したときには資金を振ろうかなあと思っています。リスコン5は使いどころが難しいETFなんですが、一部予備資金として活用できないか狙っています。

ドルコスト法は、万能ではないにせよ、安値購入する可能性(メカニズム)を内包するすばらしい方法です。インデックスファンドとドルコスト平均法の組み合わせは、本文でも書きましたが、ある意味で最強だと思います。ただ、それでは物足りない(パフォーマンスというよりも、資産運用のアクティビティとして)人には、こんな方法はどうだろうという提案です。

いきなりレバレッジをかけた信用取引をするよりは、不安少なく取り組めるのではないでしょうか。

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